環研究圏擬装網

北海道の大地で研究と趣味に勤しむへっぽこの備忘録。

ヒメジ、あるいは

お久しぶりです。実家に帰っていろいろ休んでおりましたので、更新をしばらくしていませんでした……

実際のところ、このブログを書くにあたって様々な文献を読みつつ書かなくてはならないために、後から見たときの内容の薄さに比べて書くための労力が思いのほかかかっており、記事を書くのがややしんどいということも本音です。そもそも今研究の正念場のようなところということもあり、こんなところに書いている暇がないというところも要因の一つではありますが。

 

言い訳終わり。

実家に帰る少し前に、私が見ていた標本はヒメジUpeneus japonicus (houttuyn, 1782)の十数個体である。以前の記事にもレントゲン写真を添付した、あれである。知識の乏しい私は、日本産のヒメジ属魚類なんて南方ならともかく、北海道近辺に分布するなんて通常の、いわゆる標準和名ヒメジに違いないだろうと考えていた。実際に日本産魚類検索全種の同定第三版においても、背鰭棘数が7で尾鰭上葉の斜走帯が見られる種はU.japonicusであると同定された。しかし今や第三版が出版されてから8年が経過して、様々な知見がそれまでに得られていたのである。やはり鹿児島大学、強い。

 

萬代 あゆみ,伊東 正英,本村 浩之.鹿児島県から得られた北半球初記録のヒメジ科魚類Upeneus spottocaudalisユカタヒメジ(新称).日本魚類学雑誌.2018 年 65 巻 1 号 p. 35-39.DOI: https://doi.org/10.11369/jji.17-056

Yamashita, M., D. Golani and H. Motomura. 2011. A new species of Upeneus (Perciformes: Mullidae) from southern Japan. Zootaxa, 3109: 47–58.

Motomura, H., M. Yamashita, M. Itou, Y. Haraguchi and Y.Iwatsuki. 2012. First records of the Two-tone Goatfish,Upeneus guttatus, from Japan, and comparisons with U.japonicus (Perciformes: Mullidae). Spec. Divers., 17:7–14.

 

これらの論文によると、背鰭棘が7のUpeneus魚類はU.japonicus類似種群に分類されるという。この類似種群にはサクヤヒメジUpeneus itoui Yamashita, Golani and Motomura, 2011やユカタヒメジUpeneus spottocaudalis Uiblein and Gledhill in Uiblein et al., 2017を含む13の有効種が含まれており、総鰓耙数の差などから分類できるというが……この鰓耙数を数えるのは、存外難しいのである。やったことのある人ならわかるかもしれないが、鰓耙は上下で区別され、上枝側を数えるのは鰓ごと切除しないならば無理矢理に鰓蓋をこじ開けて観察するほかない。こじ開けながら小さな鰓耙を一つ一つ数える作業は……本当に疲れるのだ……。

 

これから研究発表に向けて中間発表やなにやらでまた大変な日々が続きそうだ。無理をしない範囲で頑張りたいと思う……。