環研究圏擬装網

北海道の大地で研究と趣味に勤しむへっぽこの備忘録。

何も見えねェ

私の研究では、種同定や分類やらのために脊椎骨を数えることがある。脊椎骨を数えるといっても、まさか貴重な標本を解剖してみるわけにもいかないので畢竟X線写真、つまりレントゲン写真を撮影することとなる。

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ヒメジUpeneus japonicus (Houttuyn, 1782)。たぶん。

この写真は明暗などをいじっていないスキャン・トリミングしたままの画像なのでこのような感じである。これを用いて脊椎骨数を数えていくのだ。何の技術も必要ない、馬鹿でもできる作業である。

最近はこの作業を多くしていたが、どうにも単純作業を続けていると将来の不安を感じてしまう。論文に出来るほど個体数が終わっているわけでもなく、その場しのぎのX線撮影に時間を使っている。もっと標本捜索に時間をかけるべきであるのに……。将来が何も見えない……。

そんなことを考えながら現像していたら、フィルムに撮影したとある魚の影が浮かび上がってきた。

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……。

何も見えない……。脊椎骨も、何もかも……。あるのは体表の鱗が変化してできた棘状突起のみである。水族館でも愛くるしい姿と泳ぎ方で人気なハリセンボンDiodon holocanthus (Linnaeus, 1758)の姿が、こんなにも心を折ってくることはないだろう。

見えているのは棘だらけの茨の道。それでも行かねばならぬというのか……。

 

あとこの魚、どうやって脊椎骨数を計数すればいいんだ……。